文化史の文脈においてスピノザを読む 

担当教員:鈴木 泉、宮田眞治、王寺賢太、出口剛司


オランダの哲学者スピノザ(1632-1677)ほどに、その評価の振幅が広く、また様々な領域において影響力をもった哲学者は存在しない。死後暫くは「死せる犬」として遇されるが、18世紀の後半において、スピノザの思索の評価を巡って論争がドイツにおいて生じ、この論争(スピノザ論争=汎神論論争)はカントなども巻き込みながらドイツ観念論成立の一つの契機となった。その後、哲学史研究の興隆と共に、スピノザは哲学史の一齣として遇されるかに思われるが、20世紀後半、今度はフランスにおいて新しいルネサンスを迎える。アルチュセールやドゥルーズがこの哲学者に思考を賭ける。だが、その影響は狭い意味での哲学や思想に限られはしない。イギリスの作家ジョージ・エリオットは『エチカ』を英訳するし、アメリカの作家マラマッドの小説『修理屋』の主人公はスピノザを愛読する。一時期の大江健三郎が、残りの人生はスピノザを読んで過ごすと述べていたことはよく知られているだろう。スピノザの思索は、文学的想像力も刺激したのである。本演習では、スピノザの思索を文化史の文脈において読解することを通して、1/スピノザの思索の振幅ある受容の模様を検討し、2/スピノザの思索の可能性を探る。